新作公演「復活」ご案内文

 

 

桜の時期、とある宴会の席で私のことを「この人はね、無駄な努力をしている人です」と紹介されることがありました。
とっさにその紹介の仕方に唸り「そう、それ!」と相槌うちながら、昔々の強い相槌の体感が蘇りました。
それは17歳の時に舞踊家・山田せつ子さんのワークショップを受けた時です、参加者各自が短い動きを作り、それを素材に即興で踊るという流れの中で、作った動きを順にせつ子さんに見せる際に、やりかけた動きをとっさに変えた私に発せられた、せつこさんの言葉「そう、それ!」。当時は恥じらい深き乙女だったので、発話こそしなかったのですが、心の中と全身で強く相槌した記憶があります。

では、本題に。
 
2016年からマーラーの全交響曲を使用して振り付け作品を創作することをはじめました。
これは、今はなきアトリエ劇研のアソシエイトアーティストに選出されたことをきっかけに、始めたプロジェクトです。劇研では2016年に第1番【TITAN】、第7番【夜の歌】を上演し、2017年夏に劇研での私の最後の公演は第6番【悲劇的】でした。
それから2年経ち、京都に新しい劇場THEATRE E9 KYOTOができました。
THEATRE E9 KYOTOはアトリエ劇研という劇場が存在しなければ、できなかった劇場です。
 
この2年間、こういった、なくなったものを受け継ぐ意志を持つ人々という存在に、私はいろんな場所で出会いました。
それは、THEATRE E9 KYOTOを実現するために走り回った人やE9がある東九条の住人の方々、私の住んでいる右京区の嵯峨大念佛狂言保存会や愛宕山を守る方々、滋賀の限界集落・朽木古屋の念仏踊りを継承する方々、舞踏と再会するために向かった屋久島、新長田で向き合った黒沢美香のジャズズという作品、縁が重なり毎年行く気でいる中国・雲南省、マーラーのリサーチで行ったオーストリア、そして今は、韓国・ソウルでこの文章を書きながら、まだまだ書ききれないと、のたうち回りながら、京都に居を構えながらも、いろんな所にリサーチや公演で足を運び出会った人々の中にあった、受け継いでいく意志や、伝えていく宿命に感銘し続けながら、私が舞踊を続ける上で、伝え残していきたいものはなんなのかと自問自答しています。
 
自問自答はしながらも、私に「そう、それ!」の体感を与えた山田せつ子さんと、私が「そう、それ!」の体感を伝えたい斉藤綾子さんと、9月20~22日にTHEATRE E9 KYOTOでマーラー交響曲第2番【復活】を全楽章、たっぷりと90分間、3者のソロ/ディオ/トリオでご披露します。
今回は、ここ数年ずっと憧れを抱いている、タイムペインティングという独自の表現を確立した、ビジュアルアーティストの仙石彬人さんもご一緒いただきます。
舞踊とタイムペインティングという、常に変化していく表現に向き合いながらも、まさに日々の「無駄な努力」というものに勤しんで挑みます。けれど、観客の皆様に「そう、それ!」という強い相槌を打っていただけたならば、それは「無駄でない努力」のになりますので、どうぞ【復活】をご覧にTHEATRE E9 KYOTOにお出かけくださり、4人の表現者が挑む、消えて現れ存在する表現をお楽しみいただければ幸いです。

ぜひ皆様、2019年9月20~22日、THEATRE E9 KYOTOにて。
マーラー交響曲第2番【復活】全楽章を踊る身体を目撃ください。

では、「無駄な努力」の消えない世の中と表現の可能性を願いながら。

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きたまり/KIKIKIKIKIKI新作ダンス公演
マーラー交響曲第2番ハ短調「復活」

演出・振付/きたまり

出演/山田せつ子、斉藤綾子、きたまり

ビジュアル/仙石彬人

2019年9月20日(金)19:00 / 21日(土) 19:00 / 22日(日) 17:00
*開場は開演の20分前、受付は40分前より開始

〈公開リハーサル〉 9月19日(木)19:00
*開場・受付は開演の15分前より開始 *記録写真撮影あり

【会場】
THEATRE E9 KYOTO

詳細・ご予約
https://askyoto.or.jp/e9/ticket/201909

              
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