きたまりインタビュー

聞き手 | 和田ながら(したため)


 

和田:なぜ今回はマーラーに取り組んだのでしょうか? あるいは、TITANという楽曲をやりたいという

     のが先に会って、マーラーに行きついたのでしょうか。

 

きた:マーラーがやりたくてTITANにしました。

 

和田:では、TITANをやる、というきっかけは? 

 

きた:マーラーの交響曲をこれから全部やろうと思った時に、最初にやるんだったら1番の方がいいか

   なと。

 

和田:なるほど、TITANはマーラーが初めて作曲した交響曲なんですね。全部やるんなら、最初は1番

   にしようと。

 

きた:実は最初7番がやりたかったんだけど、1番から始めた方がマーラー交響曲を制覇する覚悟が伝

   わるかなと

   まあ、1番から初めて2番をやるわけではないんだけど、最後は10番を….するかな?。

 

和田:マーラーの交響曲は10番が最後にあたるんですか?

 

きた:未完成な曲なんだけどね。

 

和田:最後まで作曲できなかった、ということでしょうか。

 

きた:10番作っている途中でマーラーが亡くなっているから実際に未完成。

   しかも亡くなる前に自分が死んだらこの原稿は燃やしてくれって遺言残したのに、残った人が

   書き直したりしてる。なので10番はやるかわからないんだけど。

   マーラーが生きていた内に完成させた9番をやるならば最後の方かな。まず1番やって次に7番する

   のは決めてて、次に何番しようかなって考えてる。

 

和田:じゃあ、KIKIKIKIKIKIのマーラーシリーズは、まず1番やって次に7番に続き、そして最終的に

   は9番にいきつくんですね。

 

きた:今は、そんなプランです。

 

和田: TITANの魅力はなんですか?

 

きた:なんだろうな若々しさ

 

和田:それは、彼が作曲した最初の交響曲だから?

 

きた:マーラーが作った最初の交響曲で、28歳で作っているんですよ。たとえば楽曲に感じる1番の

   若々しい苦悩と、他の交響曲ならば40代で作った9番の苦悩違う次元の重みで、1番の魅力は

   フレッシュで夢や希望にあふれている感じがする

 

和田:若者的な感じがするんですね。

 

きた:そうそうそう。あと、4楽章の熱量も凄い。

 

和田:では、交響曲1番から9番に通底しているマーラーの魅力とはなんですか?

 

きた:んーーめんどくさい感じ。(笑)

 

和田:(笑)それはどういった部分でしょう。

   「マーラーさん、あなたはめんどくさい人ですね」と言いたくなるような??

 

きた:めんどくさいっていい方は語弊があるんですけども、妥協しない頑固そうな印象っていうか…

     例えば、マーラのスコアは演奏者は嫌だと思うんですよ。

 

和田:どういうことでしょう。

 

きた:気持ちよく演奏させないようなハードルを与えた上で1人1人の演奏者に快感を与える感じかな

   細部まで演出指示がスコアに書いてある。曲の複雑さは楽曲によって違うと思うんだけど、

   曲自体も長いし、終わってもいいところで終わらないところとか伝えきれないものを伝えようと

   する姿勢がめんどくさいとも言えるけど、そこが魅力かと。

 

和田:今回はスコアを参照しながら演出をしているんですか?

 

きた:んっとね、、スコアがドイツ語なんですよ。。。(笑)

 

和田:(笑)

 

きた:まあ、私も元々スコアが読める人間ではないので、これからのためにも勉強はしてます

   ちょっとずつわかるようにはなっているんだけど、ドイツ語だからねえ。翻訳を確認しながら見

   てはいるんだけどね。スコア自体を全部読み解くまでは理解できてない。

   でも、動きとしての指示や象徴的なことだけはちゃんと参照しようかと。

 

和田:それはどんな指示ですか?

 

きた:立ち上がって演奏するとかっていう指示なんだけど、動きのヒントになるかなと。

 

和田:動きの指示がスコアに書き込まれているって面白いですね、音に影響するというよりも、演出的な指示なんですか?

 

きた:あれは視線的な演出でしょうね。

 

和田:きたまりさん自身は、TITANをオーケストラの生演奏で聞いたことはあるんですか?

 

きた:TITAN予定が合わなくて、聴きにいけていんです。他の交響曲は聞いているんですが。

 

和田:CDと生の演奏では印象が変わってくると思うんですけど、マーラーの交響曲を生で聴く体験はいか

   がでしたか?

 

きた:いやー、CDだと飽きるのに、生演奏は本当に飽きないで聴けるなーって(笑)

 

和田:(笑)CDは何故飽きてしまうんでしょう。

 

きた:とにかく長くて(笑)。どこ演奏しているかわからなくなる、迷路みたいで。メロディが変わって

   戻ってきて、今どこの部分聞いているんだろうってなるんですよ。1番はさすがに聴き込んでる

   からわかるんだけど、他の交響曲はまだ全然、何楽章のどの部分聞いているかわかんなくなっちゃ

   う。楽曲としてCDで聴くと集中力も切れちゃうし。だから生演奏で聴いたときは音の迫力もすごい

   し、演奏者が立ったり移動したりもするし視覚的にも面白かったなー。

 

和田:そのスコアに指示されてる演奏者の動きは、きたまりさんから見ても、なんていうか…いけてる感じでしたか? 

 

きた:いけてるよ〜(笑)この前マーラ交響曲2番聞きに行って、途中で打楽器の人と管楽器の人がい

   なくなったんその後にあわててまた入ってきたん。えっ!って思ったら、できるだけ遠くで

   演奏するっていう指示が楽譜に書いているみたいで。移動して袖の方で演奏していたんだと知っ

   て、すごい演出だなーと。

 

和田:それ、珍しい光景ですね。一度去って、ふたたび戻って来る演奏者。

 

きた:うん、珍しい。あと、生演奏に行くと指揮者の動きがすごくて。釘付けになっちゃう。

 

和田:指揮者の動きの魅力はどこにあるんでしょうか。

 

きた:音を浴びて、生演奏に囲まれている状態が、まさに豪華なソロダンスだなって。

   しかも観客には顔を見せずに、ずっと背中を向けているところなんて、高度なソロやー!と思って

   見ている部分はあるかな。

 

和田:将来的にはオーケストラの生演奏で踊りたい、という思いはあるんですか?

 

きた:もちろん!!ありますよそれが夢で。本来ダンスは生演奏でやるべきものとは思っている。

   だけど、その生演奏が演奏家が5人なのか、10人なのかで100人なのか……….

     ダンサーと演奏家の人数で場への圧力が異なるし、どうしたら、生演奏オーケストラでも成立

   するダンスになっていくかなって考えながらやっていくつもりではある。

 

和田:オーケストラも身体動かしますもんね。

 

きた:ユニゾンは演奏家の方が揃うだろうしね。本当に生演奏マーラーでダンスは夢ですよー。

   マーラー交響曲をやるっていうことはそうゆうところを目指さないとね。

 

和田:すごい初歩的なことをお尋ねするんですけど、今回のTITANはマーラーの1番を最初から最後ま

   で全部通してかけるんですか?

 

きた:うん、全部かけきる。

 

和田:それはAプログラムも、Bプログラムも。

 

きた:AもBもどちらも。ただ、複雑なのは第1番って初演の時の5楽章だったけど、今は4楽章になってい

   るんですよ。その途中で消えた「花の章」という楽章を使うか使わないかは悩んだ。

   初演の状態か、マーラーが再演の時に決めた完成状態にするかは。

 

和田:今はどちらを採用しているんですか?

 

きた:マーラの完成状態の意図を汲み取って1つの楽章を消した、4楽章での方です。

 

和田:では最後にうかがいます。今回AB両プログラムで観客に見てもらいたいポイントは?

 

きた:そうですね、同じ楽曲を使用した出演者と演出の異なる2作品になっているので、視覚的に楽曲

   の印象も変わっていく様が見どころだと思います。出演するダンサーもバラバラの身体性を持って

   いて、個々が同じ楽曲に挑むことで、それぞれの楽曲の捉えが異なるところも面白いです。

   是非、A・Bプログラム2作品見て欲しい!です。

 

 

 

 


 

和田ながら

 

京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院修士課程修了。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動を始める。ユニット名の由来は、手紙を「したためる」。主な作品に、俳優の日常生活からパフォーマンスを立ち上げた#1『巣』、太田省吾のテキストをコラージュし用いた#2『はだあし』、作家ジョルジュ・ペレックの記憶にまつわる作業を参照した『肩甲骨と鎖骨』、日々の記憶を思い返すこと/損なうことをめぐる#3『わたしのある日』がある。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞。したためは2015年よりアトリエ劇研創造サポートカンパニー。

演出家としての活動と並行して、制作スタッフとしてもダンスや演劇などさまざまな企画に関わる。

2013年よりDance Fanfare Kyotoの運営に携わる。